2015年3月30日月曜日

STROKE2015でリハビリロボットの演題を発表しました。

3/26から3/29まで広島で開催されましたSTROKE2015にて歩行支援ロボットの演題を発表させて頂きました。
http://www.stroke2015.com/40jss/index.html
http://www.stroke2015.com/pdf/program_01.pdf
(P145)


歩行補助ロボットを用いた脳卒中後歩行障害へのアプローチ 県立広島病院脳神経外科 籬 拓郎 他。

広島大学(弓削教授)、芝浦工業大学(田中准教授、現埼玉大学)、スペース・バイオ・ラボラトリーズ共同開発の装置で、今回は脳卒中慢性期の単回の訓練でしたが、外転歩行の軽減等の結果が得られました。floorからは歩行パターンが異なる場合の装置の有用性等について貴重なご質問を頂きました。
今後急性期、重症例での応用へ進めて行ければと考えています。
弓削教授はじめ皆様にお礼申し上げます。




2015年3月11日水曜日

今月の雑誌から 食道癌原発転移性脳腫瘍の3手術例

食道癌原発転移性脳腫瘍の3手術例 藤井隆司ら 脳神経外科 43 (3): 221-225, 2015

自衛隊呉病院から県立広島病院に研修診療に来られている藤井先生による症例報告です。

転移性脳腫瘍の原発巣では肺癌、乳癌が比較的多く食道癌は比較的まれですが、この論文では 食道癌脳転移について代表症例1例の経過を提示、これを含めた3例がまとめられています。


考察から
  • 食道癌の脳転移の頻度は1.7%、2.1%などの報告がある。
  • 一般には肺転移からの二次性転移とされるが、食道癌原発お転移性脳腫瘍症例の15~30%程度しか肺転移が認められない。これは肺転移病巣が微小なため画像的に描出できないか、あるいはBatson's plexusと呼ばれる静脈叢を介して椎骨動脈を経由し転移しているためと言われている。
  • 本邦では組織系では扁平上皮癌が多い。
  • 嚢胞形成を伴う転移性脳腫瘍は扁平上皮癌が多い。一方、腺癌では結節性病変が多い。
  • 嚢胞形成例ではOmmayaリザーバーを設置して嚢胞内容液を穿刺吸引し嚢胞を虚脱縮小させてから定位的放射線照射を行うことで治療成績が向上し得る。 

Batson静脈叢
硬膜外脊椎静脈。弁構造を持たずいわゆるvenous lakeのように静脈血を貯留しており腹腔や胸腔内圧の変化により血流の方向が容易に逆転する。肝や肺の静脈フィルターを介さず癌細胞が他部位に到達する経路となり得る。特に骨転移の経路として重要。


2015年2月27日金曜日

今月の雑誌から Neurosurgical Phlebology 術後脳静脈還流障害(基礎と臨床)

Neurosurgical Phlebology 術後脳静脈還流障害(基礎と臨床) 中瀬裕之 脳神経外科 43(2): 97-107, 2015

Phlebology=静脈学。知りませんでした。
 手術アプローチ時に静脈温存あるいは静脈損傷回避は最も重要なテクニックです。しかし脳静脈については基礎的および臨床的研究が進んでいないとのこと(確かに動脈の発表は非常に多いですがそれに比べて静脈は少ないと思います)。
 本総説では基礎的な知見を踏まえたうえでpterional approach、interhemispheric approach、subtemporal approach等について静脈の面からの注意点が述べられています。また出血時にはオキシセル+フィブリン糊のA液よりもゼルフォルム+B液のほうが止血効果が高いなど実際的なtipsも述べられています。
雑誌の編集後記にもあるように脳神経外科医必読の内容と思います。

2015年2月25日水曜日

注目論文 発症6時間以内の内頸動脈、中大脳動脈閉塞に対して血管内治療は有効

2015/02/25抄読会にて

発症6時間以内の内頸動脈、中大脳動脈閉塞に対して血管内治療は有効。


A Randomized Trial of Intraarterial Treatment for Acute Ischemic Stroke
N Engl J Med 2015; 372:11-20
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1411587#t=articleTop


急性期脳卒中に対する血管内治療の無作為試験

アブストラクト
【背景】
近位動脈閉塞により発症した急性期虚血性脳卒中患者に対して血管内治療は緊急血行再建において高い効果を有している。しかし機能的転帰における有効性の証拠は不足している。
【方法】
対 象となる患者を通常の治療に血管内治療追加の群または通常の治療のみの群に無作為に割り付けた。血管の画像診断で前方循環系での近位動脈閉塞が確認され発 症から6時間以内に血管内治療が施行可能なものを対象とした。一次エンドポイントは発症90日後のmodified Rankin scaleスコアとした(このスケールは機能的転帰を症状なしの0から死亡の6の間で数値化する)。治療効果を補正オッズ比として順序ロジスティック回帰 分析で評価し、事前に指定した予後因子で補正した。補正オッズ比は血管内治療が通常の治療と比較してmodified Rankin scoreを下げる尤度により評価した(シフト解析)。
【結果】
オランダの16のメディカルセンターで500例が登録された(血管内治療 群233例、通常治療のみ267例の割り付け)。平均年齢63歳(23-96歳)で、、445例(89.0%)で無作為化前にアルテプラーゼ静注が施行さ れていた。血管内治療群では233例中190例(81.5%)で血栓回収ステントが使用された。補正オッズ比は1.67(95%信頼区間[CI]、1.21-2.30) であった。機能的自立(modified Rankin score 0-2)の割合における絶対差は13.5%で血管内が有利であった(32.6%対19.1%)。死亡と症候性頭蓋内出血の頻度では有意差はなかった。
【結論】
前方循環の近位動脈閉塞による急性期虚血性脳卒中患者において、発症6時間以内の血管内治療は有効でかつ安全であった。


実臨床といっていい条件で有効性を証明しています。
ポイントは
(1)血管内治療群、通常治療群の両者ともIV t-PAを施行(つまり血管内治療群も大部分はIV t-PA後に施行)。
(2)両群ともICからM1閉塞とM1閉塞で約9割を占める。
(3)使用したデバイスは8割以上が血栓回収ステント。
(4) 30日後死亡率は両群とも約18%、症候性頭蓋内出血は両群とも7%前後。
(5)再開通の評価ではTICI 2b+3が58.7%と他のトライアルと比較してやや低い。
(6)血管内治療群で対象血管以外の領域の脳梗塞出現が8.6%と比較的高い。